いつの時代でも、最良なものは権力者の手中にあります。古来
中国でも、男性も女性も己の美貌と健康のために贅を尽くし、家来に世界中を捜して歩かせ、不老不死に効くという1羽の純白な絹糸のような羽毛をまとった、たいへん美しい神鳥を手に入れました。あの偉大な権力者、秦の始皇帝の権威の象徴ともいえる宮廷では最高薬膳料理として神鳥は珍重され、カラスのように黒く輝く血、肉、骨から烏骨鶏と名付けられました。
そのころ宮廷には太后、皇后、皇妃(皇帝の側室達)と、常にたくさんの女性が住んでおりました。皇妃達の嫉妬の渦巻く宮中では、皇帝に見そめられるために秘術の限りを尽くし、自分が数多くの妃の中でより美しく見られ、皇帝の寵愛を独占するのにはよほどの美人で頭が良くても、想像を絶する程の競争の毎日でした。
「今宵、皇帝の寵愛を受けるために、元気な子供を授かるために、そして永遠に若く美しくあるために…」そんな彼女達のために、烏骨鶏は非常におおきな役割をしていました。
殿方達は女性以上に不老長寿、強靱な体の維持の願望は貪欲でした。皇帝の日々の政務は多忙を極め、頭を使い神経を研ぎ澄ませ民衆にはより強さを誇示し続け、なおかつ宮中の大勢の女性の中から選んだ今宵の妃君を、来る日も来る日も平等に可愛がり喜ばせなければなりません。常人の体力や知力では、とうてい不可能な技でしょう。しかし、秦の始皇帝が是程までの支配者に登りつめ君臨し続けてこられたのは、烏骨鶏の神秘な力と彼を支える女性達の愛があったからに違いありません。